こんにちは、みくろです。
今回は、スペイン初の日本人クラブ監督に就任した経歴を持つ、佐伯夕利子さんの著書、「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」をご紹介いたします。
はじめに
早速ですが、皆さんに質問です。
「誰かに何かを教える時に、無意識のうちに”自分の正解”を持ってしまっていませんか?」
ほとんどの人は“YES”でしょう。しかし、これは何も悪いことではなく、至極当然のことなのです。
ただ一つだけ、考えて欲しいことがあります。
「”自分の正解”にたどり着くように、指導をしていませんか?」
ドキッとした方。多いと思います。
さぁ、それでは本書の学びに触れていきましょう。
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心に響いた言葉
「とにかく、一周しておいで」
仮に、自分が信じているものがひとつある。ここに長らく居座ってきたけれども、一度ぐるっと一周回ってまったく違うものを見てきてはどうか。それでも「前いたところがいい」となれば、戻ってくればいいじゃない、という話です。動いたこともないのに、他を否定するだけなのはあまりにももったいない。だから、とにかく一周しておいで、と言うのです。
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
自分でこうだと思っている確固たる信念みたいなもの、一番譲れないものにこそ「クエスチョンマークをつけて、こころに余白をもて」と教わったのです。
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
ラーン(Learn=学び)→アンラーン(Unlearn=学び壊し)→リラーン(Relearn=学び直し)
この繰り返しこそが、指導者に不可欠です。指導者一人ひとり、それぞれ異なる「学び」が繰り返される。こうしたいくつもの「学び」を言語化し、指導者間で意見を交わし、ディベートを繰り返す。それをクラブ内で共有していくことで、コーチングレベルは間違いなくアップするのです。
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
「問題だけもってきても、私は君を受け付けない。差し戻すよ。よって、必ず自分で考えて、こうしたら解決すると思う、こうあるべきだと思う、それにはこのようなソリューションの選択肢がある。そんな試案を持ってくるのであれば、話を聞くよ」
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
「それは、あなたがたの力でどうにかなるものなの?」
プレーするのは選手。自分の力が及ばないことに時間を費やすのは無駄である、ということです。
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
「失敗できる環境を提供することこそが、選手にとっての学びのチャンスとなる」
そのような理解にたどり着きました。指導者の一方的な教え込みや、細かな修正、ティーチングはNG、選手が心地よく学べて、失敗しても責められない環境を目指すことにしました。
よくよく考えると、時代は変わり、環境は変化します。であれば、私たち指導者の成功体験は通用しなくなります。ビジネスも教育も同様にパラダイムシフトしなくてはいけません。
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
日本は、頑張るし真面目だけれど、子どもたちに自分で思考する習慣がありません。意見しても受け止めてもらえなかったり、リスペクトしてもらえない。大人がもっている答えがすべてという文化です。
自分で考え、主張できる文化へと変わらない限り、サッカーの練習に来た子どもに「自分で考えろ」と命じてもハードルが高いでしょう。学校の教育が変わらなければ、根本的なことは変わらない。スポーツも社会も、その基盤は教育なのです。
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
「人は知っていることしか、見えない」
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
「言葉はアクションを生む。アクションはパフォーマンスを生む。だからこそ、注意深く言語化しよう」
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
選手に何を伝えたかというと、ひとつの現実を「どのように認知するか」が非常に重要だということ。なぜならば、監督の決断は、選手が自分ではどんなに時間を費やしても、どんなにエネルギーを消耗しても、変えることが出来ないからです。
世の中には自分ではどうすることもできないことがある。だからこそ、自分の力で向上できるものに意識を向けること。
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
「僕(私)はこう考えて、こうやってみようという具合に、僕は、私はの一人称で解決するすべてのことをやり尽くそう。自分次第で何とかなるものに、自分たちの時間と労力をかけていこう」
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
「指導者は、選手の学びの機会を創出するファシリテーターに過ぎない」
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
「教える」は、指導者や「上司が主語です。一方の「学ぶ」は選手や部下が主語になります。指導者はあくまで選手の「環境」の一部と言えます。
したがって、彼らは教えません。手取り足取り教える代わりに、選手が心地よく学べる環境を用意し、学習効果を高める工夫をする。「教え方がうまい」といった指導スキルではなく、選手が学べる環境をつくることが育成術の生命線なのです。
考える癖をつけることに重きを置き、考える余白をつくってあげる。
一方的なコーチングをせず、問いをつくることにこころを砕く。
選手たちが「学びたい」と自然に意欲がわくような環境を整備する。
これら教えないスキルの核になるものを獲得するプロセスで、私は気づきました。「伸ばしたい相手を主語にすれば、誰しもがその相手のために心地よい学びをつくろうとする。誰しもが工夫し始めるのだ」と。
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
「日本(のスポーツ界)には、一生懸命に頑張る文化はあるけれど、選手が自ら考えて行動する文化がなさすぎる」
頑張らせる指導(教育)はあるけれど、自ら考えて創造したり、自分で判断できる力を養う指導(教育)がないということです。
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
感想
「全人類が読むべき指導のバイブル」
これに尽きます。
全ての章で、自分の凝り固まった思考に気付きを与え、同時に「こんな考え方もあるんだよ」と新たな道を示してくれる書籍でした。
綴りたいことはたくさんありますが、ここで一つだけ。
本書のタイトルにある「教えないスキル」とはなんなのでしょう?
ここからは完全に私の解釈ですが、これは決して、何も教えないということではありません。
簡単に言えば、「(指導者の持っている)答えを教えない」ということ。
この言葉の裏には、「それぞれの答えを考えて導き出してほしい」という意味が隠されているのです。
ーーー
本書にはこんな一節があります。
問いかけの基本ルールとして、YESかNOで済ますことのできる質問は避け、どうして?どのように?といった「オープンクエスチョン」をなるべく心がけ、相手が上手く表現できず答えに困窮するような場合は、二択や三択のクイズにして誘導的な問いかけをします。
YESかNOの「クローズドクエスチョン」だと、質問者がすでに正解を用意しており、質問者が回答権を握っていることになるからです。
いずれにしても「回答者側に主導権」がある状況を常につくることで、問いに意味をもたせます。
小学館「教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」より
こういうことなんですよね。
常に回答者には、回答者だけが持っている無限の選択肢から答えを出してもらう。
そうすることで、思考する癖付けが自然と定着し、枠に留まることのない自由な発想が生まれる。
…そこで、です。この「考える力」がサッカーにどんな影響を与えるのでしょうか?
ーーー
少し考えてみてください。
「サッカーに攻撃と守備の明確な切り替えは存在するのか?」
私の答えは「NO」。
ボールを保持している側が攻撃、保持されている側が守備。あえて明確化させるならこうなります。
ここからはわかりやすく「攻撃側」「守備側」という言葉で説明していきますね。
しかし、果たして保持している側が本当に攻撃しているのか?保持されている側が本当に守備しているのか?
実際にプレーしたことのある人ならわかるかもしれませんが、サッカーとは非常に面白いもので、たとえボールの支配率が7割を超えていたとしても、攻撃している感覚にならないゲームがあります。
それはなぜか?
守備側にゲームの主導権を握られているからです。言い換えれば、「わざとボールを持たされている」ということ。
守備側は、危険なエリアを完全に抑えつつ、確実に相手の攻撃の芽を摘む。そして虎視眈々とボールを奪うポイントを狙う。
攻撃側は、どこから攻めても突破口が見つからず、それどころか攻め手が徐々に限定される。ゴールへの道筋が少しずつ狭まっていく。
これは感覚としては、守備側が攻撃していることと同義ではないでしょうか。
ーーー
話を戻します。
このように、サッカーは攻撃と守備に明確な区分けはなく、常に状況が変わっていくスポーツなのです。
その混沌とも言える状況は、「カオス」と言ってもいいでしょう。
そんなカオスを制するために必要な要素が、前述した「考える力」。
一秒ごと、一瞬ごとに変化していくゲーム展開に対応する為には、誰かから出される選択肢を待つ時間など存在しません。
自ら考え、選択し、実行する。
この繰り返しが出来ることが、良い選手の最低条件。
そして、実行から生まれたカオスを、飛び抜けた発想とそれを実現できるスキルでねじ伏せることができる選手こそが、トッププレーヤーなのではないか、と私は考えています。
ーーー
そんな「考える力」を養う為のメソッドが「教えないスキル」なのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
自分の思考が、知らなかった思考でぶん殴られる感覚は、いつまで経っても気持ちが良いものです。
まだまだ綴りたいことはあるのですが、この記事ではこの辺で。
続きはぜひ、本書を手に取ってご体感ください。
最後に、現代サッカー漫画の第一線をひた走る、アオアシ(著:小林有吾)からの一節をご紹介して締めたいと思います。
本書のメソッドの到達点は、まさにこれなのですから。
お読みいただき、本当にありがとうございました^^