こんにちは、みくろです。
今回は、多崎礼さんのファンタジー超大作第4巻、「レーエンデ国物語 夜明け前」をご紹介いたします。
(※少々ネタバレ含みますので、本書を0知識で読みたい方はご注意ください)
はじめに
今作は、レーエンデ物語の第4巻。
【夜明け前が最も暗い】
ユリア。ヘクトル。トリスタン。
テッサ。ルチアーノ。
リーアン。アーロウ。
そして、
レオナルド。ルクレツィア。
連綿と紡がれてきた革命の物語は、正義を志す兄妹と共にいよいよ大きく動き始める。
そして革命の灯火という眩すぎる光が射す直前、最も暗い時が訪れる。
それが今作、「夜明け前」。
それでは、早速感想を綴っていこうと思います。
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あらすじ
あなたを愛しています。
兄妹は互いを愛していた。きっと、最期のときまで。四大名家の嫡男・レオナルドは佳き少年だった。
生まれよく心根よく聡明な彼は旧市街の夏祭りに繰り出し、
街の熱気のなか劇場の少女と出会う。
――そして、真実を知り、一族が有する銀夢草の畑を焼き払った。権力が生む欺瞞に失望した彼の前に現れたのは、片脚を無くした異母妹・ルクレツィアだった。
孤島城におわす不死の御子、一面に咲き誇る銀夢草、弾を込められた長銃。
(講談社より)
夜明け前が一番暗い、だがそれは希望へと繋がる。
心に響いた言葉
「考えろ。何か策を考えろ。閉じこもっているだけでは何も変えられないぞ」
講談社「レーエンデ国物語 夜明け前」より
「出来る出来ないじゃねぇ!!やるんだよ!」
「失敗を恐れてたらなンも出来ねぇ。やりたいことがあるンならグダグダ言わずに突っ走れ。人の目なんか気にすンな。お前がやりたいようにやれ。わかったか、このクソ野郎!」
講談社「レーエンデ国物語 夜明け前」より
「法は秩序の番人だ。無視していいはずがない。しかし特権階級を守るための悪法に従うつもりは毛頭ない。そんなもの、言葉は悪いが、クソ喰らえだ」
講談社「レーエンデ国物語 夜明け前」より
どんなに深い闇夜でも、夜明け前がもっとも暗い。
もっとも暗い時代にこそ、黎明の星は燦然と輝く。
講談社「レーエンデ国物語 夜明け前」より
ビョルンの言葉に乗せられたわけではない。ただ思い出したのだ。自分が造った小さな世界だけを見て、都合の悪い現実から目を背けてきたことを。
あの過ちは繰り返さない。俺は今のレーエンデが知りたい。伝聞ではわからないレーエンデの空気を感じたい。そのためには、この足でレーエンデを歩き回るしかない。この耳でレーエンデ人の声を聴き、この目で真実のレーエンデを見るのだ。
講談社「レーエンデ国物語 夜明け前」より
出来るか出来ないかではない。やるしかないのだ。石塊だらけの荒野を耕し、カラヴィス畑に変えてきたように、暴力ではなく対話で、恐怖ではなく喜びで、この世界を変えていく。それが俺の正義だ。
講談社「レーエンデ国物語 夜明け前」より
「折れるなよ、レオナルド。負けても逃げてもいいけれど、絶対に諦めちゃ駄目だぜ?」
講談社「レーエンデ国物語 夜明け前」より
感想
とんでもない物語です。
試し読みされた方はご存知かと思いますが、冒頭でレオナルドのこんなセリフがあります。
「妹を愛していた」
「心から信頼していた」
「だから殺すしかなかった」
講談社「レーエンデ国物語 夜明け前」より
レオナルドは、妹のルクレツィアを殺す。
そんな地獄のような未来が約束されて、「夜明け前」は始まるのです。
光と闇
今作は、主人公である2人の兄妹によって紡がれていきます。
- レオナルド・ペスタロッチ ➡ 四代名家ペスタロッチ家の嫡男。快活な正義漢。
- ルクレツィア・ダンブロシオ・ペスタロッチ ➡ 第八代法皇帝ヴァスコの娘。シャイア城で育つ。
試し読みではレオナルドのみが登場し、ルクレツィアの姿は見られません。
それどころか、同じ家に暮らしているような描写も見受けられません。
「まだ学生の年齢なのに、なぜ…?」
それは、レオナルドとルクレツィアは異母兄妹だから。
別々に暮らしている為、お互いの顔すらも知らないのです。
そんな2人があるきっかけで出会い、共に過ごす中で、願う目的地が同じであることに気付きます。
しかし、そこにたどり着くための道のりはなぜか相反し、その色の違いはまさに「光と闇」。
「同じ目的地に向かって歩いていたはずなのに、なぜ…?」
この真相に気付いた時、あなたはきっと初めての感情に出会うことになるでしょう。
普遍的な正しさ
600ページに渡る長編となった今作の中で、最も心が震えた一節をご紹介いたします。
「正義っていうのは欲望を粉飾するための方便だよ。十人いれば十通りの正義がある。正義を突き通すって言えば格好いいけど、それは他の正義をねじ伏せるってこと。最後に残った正義はもっとも強いというだけで、正しいとは限らないんだよ」
講談社「レーエンデ国物語 夜明け前」より
「そうだね。普遍的な正しさってのは確かにある。それを忘れないでいるのは、とても大切なことだよ」
けどーーービョルンははるか遠くの空に目を向けた。
「普遍的な正しさは、僕ら人間には荷が重すぎるね」
講談社「レーエンデ国物語 夜明け前」より
これは、ビョルンという新聞記者がレオナルドに放った言葉。
普遍的な正しさ = きわめて多くの物事に当てはまる正しさ
誰しもが自分の物差しを持っています。それは行動の基盤であり、指針である為、持っていることはとても大事。
ただ、“その物差しを他人に押し付けない”ということが、それ以上に大事だったりするのかもしれません。
このシーンを想像すると、“どんな想いでビョルンがこの言葉を言っているのか”、とても気になるところでもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
全5巻で構成される「レーエンデ国物語」も、いよいよ次で最終巻。
- 1巻「レーエンデ国物語」
- 2巻「レーエンデ国物語 月と太陽」
- 3巻「レーエンデ国物語 喝采か沈黙か」
- 4巻「レーエンデ国物語 夜明け前」
- 5巻「レーエンデ国物語 海へ」
最後のページを閉じる度に、副題の持つ本当の意味に気付き、感嘆のため息が漏れる。
しかし、これもあと一回。
そう思うと、どこか寂しい気持ちにもなりますが、レーエンデの行く末を見届けられるのであればこの気持ちにも整理がつきます。
ーーー
- レオナルドがルクレツィアを殺すしかなかった理由とは?
- 兄妹の正義の行く末は?
- 表紙の絵柄は何を示すのか?
- 夜明け前の暗さを乗り越え、レーエンデに革命の火は灯るのか?
続きは本書にてお楽しみください。
お読みいただきありがとうございました。
さぁ…
「革命の話をしよう」
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