あらすじ
陸上名門高校の長距離選手、眞家早馬(高3)は大けがを負いリハビリ中。そんな折、調理実習部の都と出会い料理に没頭する。一学年下で同じ陸上部員の弟・春馬、陸上部部長の親友助川、ライバル校の藤宮らは早馬の復帰を切実に待っている。しかし、早馬は競技からの引退を宣言。それぞれの熱い思いが交錯する駅伝大会がスタートする。そのゴールの先に待っているものとは。高校駅伝、箱根駅伝の臨場感溢れる描写と共に、長距離走に青春を捧げる陸上青年の思いと生き様が熱く描かれる。
(「BOOK」データベースより)
印象に残った言葉
「四年間って、結構長いんだ。自分が本当にやりたいと思っていることじゃないと、四年間も真剣に取り組むことはできないんだよ」
「四年間も自分に嘘をついて、裏切り続けるなんて、なかなか大変だよ」
ちゃんと走れ。簡単だけれど、難しいのだ。ちゃんと走ることは。
ちゃんと走り続ける、ということは。
諦める勇気があったんだ。続ける恐怖なんて、きっと乗り越えられるんだ、お前は。
感想
【”駅伝“ × ”料理“】
2つのテーマを題材にした青春小説。
良かった。
すごく良かった。
レースシーンに関してはあまり描かれてはいませんが、
料理や登場人物一人一人の描写、人間模様の描き方が秀逸過ぎました。
特に主人公の早馬。
彼の気持ちは共感できる部分があまりに多く、もはや早馬は自分でした。
人生において、失敗や挫折というものは誰しもが経験すること。
かけてきた想いが強ければ強いほど、その苦しみは想像を絶するものです。
ただ、それを乗り越えられたその瞬間、不思議と見える景色が一変するんですね。
引用させて頂きました一節で
諦める勇気があったんだ。続ける恐怖なんて、きっと乗り越えられるんだ、お前は。
といったものがあります。
これなんです。
“夢を諦める勇気“
文字に起こしてしまえば簡単そうに見えてしまうかもしれませんが、
いざ立場を自分に置き換えて想像をしてみると、
その難しさに気付くことが出来ると思います。
自分の未来のために、その一歩を踏み出し、決断ができること。
その勇気は、またいつか訪れるであろう苦難に立ち向かう勇気になり、
「あれに比べればなんてことないさ」
そんな全てを乗り越える指針、揺るぎない信念となり、自分を支えてくれます。
挫折を知るからこそ、本当に強く優しい人間になれる。
熱く描かれる努力と再生の物語をぜひ読んでみてください:)