【ぼくがぼくを決めていく】リカバリー・カバヒコ / 青山美智子【あらすじ・書評】

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読書記録
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こんにちは、みくろです。

今回は、公園のアニマルライド「カバヒコ」がもたらす奇跡を描いた、青山美智子さんの「リカバリー・カバヒコ」をご紹介いたします。

受賞歴
  • 2024年本屋大賞 ノミネート
  • 第7回未来屋小説大賞 第2位
この記事はこんな方にオススメ
  • 仕事や人間関係に悩んでいる人
  • 自分らしく生きることに誇りを持ちたい
  • アニマルライド「カバヒコ」のもたらす奇跡を目の当たりにしたい人

はじめに

【生きづらさを感じる全ての人たちへ】

人生は山あり谷あり。誰もが大なり小なり悩みを抱えて生きています。

たとえ小さな悩みであっても、それはしっかりと苦しくて、その辛さが当人にとっては全てで。

そんな時に、カバヒコがいるのです。

大丈夫。君はいつだってリカバリーできるんだから

優しく背中を押してくれる、陽だまりのような小説がここにあります。

さぁ、早速本書の感想を綴っていきましょう。

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あらすじ

5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。

近くの日の出公園には古くから設置されているカバのアニマルライドがあり、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。人呼んで“リカバリー・カバヒコ”。

アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。

誰もが抱く小さな痛みにやさしく寄り添う、青山ワールドの真骨頂。

(光文社より)

心に響いた言葉

「でも順位なんてさ、いつだって、狭い世界でのことだよ」

光文社「リカバリー・カバヒコ」より

消すのと、隠すのは違うのだ。そうやってごまかしても、なかったことになんてならないのだ。

光文社「リカバリー・カバヒコ」より

「褒められたくてがんばるって、それも悪いことじゃないんだけどな。それだけを目標にしてると、褒められなかったときにくじけちゃうだろ」

「ただ褒めてもらえなかったって、それだけのことなのに。誰が何を言ったって、何も言わなくたって、懸命に咲こうとしているその姿には、なんの変わりもないのにさ」

「だから父さんは、ただ愛するんだ。それだけ」

光文社「リカバリー・カバヒコ」より

私は、ちゃんと話せる自分に戻りたいと思っていた。

でもそれは、単に「たくさんしゃべれる」ということではなかったのだ。

本当の「話せる」って、「必要なことをきちんと伝えられる」ことなんだから。

光文社「リカバリー・カバヒコ」より

もう流されたりしない。やるべきことを、やりたいことを、私のペースでしっかりやっていく。

光文社「リカバリー・カバヒコ」より

「不安っていうのも立派な想像力だと、あたしは思うね」

「・・・・・・想像力?」

「そうだよ。不安っていうのは、まだ起きていないこととか、他人に対して抱くものだろ。それを思い描けるっていうのは、想像力がある証拠」

光文社「リカバリー・カバヒコ」より

サンライズ・クリーニングのおばあさんが言ってたみたいに、ぼくらは生まれてからまだ十年しか経っていなくて、知らないことばっかりで、これからたくさんたくさん、いろんなことに出会って、いろんな気持ちを味わっていくのかもしれない。

何が好きで、何が苦手で、何が楽しくて、何がつらいのか、試しながら覚えていくんだ。

誰かの目を気にして、カッコ悪い自分を見せないように、笑われないようにって縮こまっていたらきっと、それがどんなことなのかわからなくなってしまうだろう。

だから、ぼくがぼくを決めていく。

これから、ひとつずつ。

光文社「リカバリー・カバヒコ」より

「駅伝、やったことないからさ。おれに番が回ってきたから、まずはやってみるっていう、それだけ。もしかしたら楽しいかもしれないし、やっぱりすごくつらいだけかもしれないし、でもそれってやらないとわかんないじゃん」

光文社「リカバリー・カバヒコ」より

感想

万人が持つ悩み

まずは本書の目次をご覧ください。

  • 【第1話】奏斗の頭
  • 【第2話】紗羽の口
  • 【第3話】ちはるの耳
  • 【第4話】勇哉の足
  • 【第5話】和彦の目

お気付きになりましたか?

そうです。頭・口・耳・足・目全て、人の身体の一部になっています。

「年齢も性別も関係なく、誰しもがどこかしらに悩みを持っているんですよ」

そんなメッセージが感じられる青山先生の言葉選びに、読み始める前から心がほっこり温まります。

自分の弱さを認める強さ

「どの話を取り上げて紹介しようか」

…それぞれが素敵すぎて選べない。なんて幸せな悩みでしょう。

そこで今回は、全文特別公開されている第1話奏斗の頭」を元にご紹介したいと思います。

奏斗と雫田。

優秀であったが故に、優秀でない自分を認められない奏斗。

優秀でないが故に、優秀になる為に惜しみない努力をする雫田。

こうしてみると対照的に見える二人ですが、根本的にはとても似ているのかもしれません。

どちらも、「自分のなりたい自分像を明確に持っている」のですから。

唯一の違いは、「できない自分を認められるかどうか」。ただそれだけです。

競う相手はいつも自分

第1話において、最も心が震えた一節は間違いなくここでしょう。

「苦手だよ」

雫田さんは事もなげに言った。

「苦手だから、めちゃめちゃ、めっちゃ勉強したんだよ」

雫田さんの目が、僕を射る。そして彼女はこう続けた。

「誰かに勝ちたかったんじゃなくて、私が、がんばりたかったんだ」

光文社「リカバリー・カバヒコ」より

雫田は、誰とも競っていなかったのです。

進学校に通うことで、”順位や点数という形で周りとの優劣を知ることが日常であるのに”、です。

彼女の目標は、彼女自身の目標。

誰がどうとか、周りがどうとか、そんなことは一切関係ない。

そんな雫田の人としての強さに、奏斗が大きく心を動かされたことは言うまでもありません

まとめ

いかがでしたでしょうか?

「どうして自分ばかりうまくいかないのだろう…」

そうなんですよね。僕も失敗するたびにそんなことを思っていました。なんでしたら、今でもたまに思うことがあります。

…でも、それでもいいんだと思うようになりました。

  • 誰だって失敗する。成功している人は、ただ成功するまで失敗を重ねてきただけ。
  • 周りと比べることは無意味。それぞれの素質が違うように、人を測るものさしもそれぞれに違うのだから。
  • 人との出逢いは巡り合わせ。悪意を持つ人も、善意を持つ人も、全ては運。だから、自分が自分を大切にしてくれない人に心を砕く必要はない。一生かけても地球の人口全てには到底出逢えないのだから、その貴重な時間は自分が大切だと思える人と過ごせばいい。
  • 他人は変えられない。スキルや能力といったものは後付けできるけれど、性格や素質といったものは基本的に変えられないから。環境を嘆く時間があるのなら、自分が変わった方がよっぽど早い。

こんなゆるめのマインドセットを持つようにしてからです。

本作「リカバリー・カバヒコ」には、僕のそんな心持ちに通ずる部分、また新たな考え方を教えてくれる部分が共存し、とても学びの多い物語となっていました。

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「僕は頑張ってなんかいない」

「この程度を頑張ってるなんて言えない」

この言葉や気持ちに覚えがある人、いませんか?

「人は皆頑張り屋さん」なのです。

もっと自分を許し、認め、褒めてあげましょう。

カバヒコはその不思議な笑顔で、そっと寄り添い、ありのままのあなたを受け入れてくれます。

そして、全てをリカバリーしてくれるのです…カバだけに。

ご一読いただきありがとうございました^^

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