【判断しない力】本音で向き合う。自分を疑って進む / 佐伯夕利子【あらすじ・書評】

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読書記録

こんにちは、みくろです。

今回は、スペインの名門サッカークラブ、ビジャレアルで活躍される佐伯夕利子さんの「本音で向き合う。自分を疑って進む」をご紹介いたします。

この記事はこんな方にオススメ
  • 育成に関して悩みを持ったことがある人
  • 考えたこともない思考に感動と衝撃を受けてみたい
  • 寝ても覚めてもサッカーのことばかり考えている

はじめに

「指導者は完璧であるべきだ」

「選手は指導者に従うべきだ」

こんな考えを持っていませんか?

断言しますが、実際にそれは正しくありません。

本書は、誰しもが持つ「~べき」という固定概念を、気持ちいいほど強烈な一撃で覆してくれます。

それでは、早速感想を綴っていきましょう。

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あらすじ

スペイン男子クラブ初の女性監督は日本人

ビジャレアルでの指導改革を著した『教えないスキル』から3年。
生き馬の目を抜く欧州フットボール界で味わった歓びや葛藤、
発見と学びを赤裸々に綴った32年間の軌跡。

「この業界には二つの生き方を選択する人たちがいる。
ひとつはその地位にしがみついて生き延びようとする者たち。
もうひとつは自らを生きる者たち。ユリコは後者を目指してほしい」
上司が贈ってくれたエールである。

(竹書房より)

心に響いた言葉

このようなコーチたちの姿勢、振る舞いが、私に大きな気づきをくれた。選手が大人であろうが、3歳の子どもであろうが、コーチと選手間に縦の関係性、つまり主従関係は存在しない。あくまでも対等なのだ、と。

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

人は自分を疑い、常識とされるものを疑って変えなくてはいけないものがある。けれど、中には変えなくていいものもある。そう思っている。

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

繰り返しますが、勝ち負けの記憶は選手の中にさほど深く長くは残らない。良いサッカーをしたなんてことも。残るのはその人を見る眼差しです。指導者の存在が、選手の人生を構成する大切な因子のひとつになっている。それに尽きる。これこそが10年前にやったアプローチの成果と言えるでしょう。

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

選手には創造性が必要だよね。それを生むには自由と、安心安全の空間。この二つが不可欠です。それらが提供されているかは最低限の環境条件だと考えます。そのなかで、主体である選手たちが自ら考え、選択する。間違った選択をしたり、間違ったらアクションを起こしながら、ミスを糧にしながら気づいてやり直す。そういったことを積み重ねていく。それが成長のプロセス。したがって指導者は、選手に「ミスや間違った選択をする機会」を提供しなくてはいけない。それなしに選手のポテンシャルの最大化はあり得ません。

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

人間は、その学びを限定的にしてしまうと、成長の幅が小さくなってしまうと思うんだ。学びの領域を広げることが大切だよね。だから、みんなには「高速道路を走るつもりでアクセルをふかせ」ってよく言います。狭い小道に限定して学びというものを閉じてしまっていたら、指導者も選手も学びは深まらない。へぇ、こんな本読んでるんだとか、こんな映画観たんだ、こんな人と話したの?っていうのがいい。

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

どの時代になっても、「考える」は、「問う」から生まれます。だから選手に対して問いを立て続ける。そんな時間の投資が必要でしょう。最初は自分で考えたりできず迷子になるのですが、そこに時間を注ぎ込めばその先に必ず良いことが待っています。それはすなわち、良いチームや良い指導者を育てる投資でもあります。そこを大切にできるビジャレアルというクラブを、私は誇りに思います。

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

「どんな指導法を選ぶかはその人次第だが、そこにある選手との関係性の豊かさは、指導者がそれまでの人生で何を学び、考え、行動してきたかを示す『通知表』であることを忘れてはならない」

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

人は結果、どのような決定がなされたかではなく、その決定プロセスに自分も参加したか、させてもらえたかどうかで不満を抱いたり納得したりする。それこそがヒューマンライツ(人権)であり、民主的なオーガナイズと言える。欧州で意識高くとらえられている「市民社会の形成」は、まさに決定プロセスに参画するかどうかが重要視される。それは基本「声と票」(Voz y voto)である。

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

「私たち人間は常に物事を良い悪いの2軸で整理し、判断しようとする癖がある。この思考癖を治し、判断を一旦保留することは、インテリジェンスとして求められているんだよ」

私たちは、短時間で何かを決定したり、ぐいぐい引っ張ってくれたりする行動力のあるカリスマ的なリーダーに憧れがちだ。私も以前はそう考えていた。もちろんそんな牽引力が必要な場面もあるが、現代のリーダーシップ像はメンバーの能力を引き出し、主体性を持たせることが必要とされる。議論を省いて独断で推し進める力ではなく、ありったけの異なる意見を聴きそれらを良い悪いで「判断しない力」がこころのインテリジェンスだと言えよう。

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

感想

育てることの本質

指導者(監督・コーチ)とは、選手の育成を行う者のことを言います。

それはプロでもアマチュアでも、はたまた町の小さな少年団でも同じ。

では、彼らが“何の為に”育成を行っているのか。

チームによって異なるかもしれませんが、その目的のほとんどは「チームの勝利」に他ならないでしょう。

ただ、今作の舞台となっているビジャレアルでは、「勝利は目的の1つでしかない」ように見受けられました。

「クラブは11人だけ強化してほしいなんて望んではいない」

「このクラブは、伸びしろがあると思った選手たちを各学年22人揃えている。22人全員が成長できる指導環境を君たちに求めているんだ」

なぜならば、人の可能性は未知数で第三者が決めることではない。私たちの仕事は、一人ひとりの成長機会、学校でいうとこの学習権が同等に与えられる環境をつくることなのだ。したがって、私たちコーチが特権的に11人を選び、彼らだけ強化することはクラブの方針と異なる。

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

本書内のこの一節は、長年サッカーを続けてきた私に大きな共感と衝撃を与えました。

サッカーは、11人vs11人で行うスポーツ。

ベンチにいる選手や監督、コーチを除けば、ピッチ上でプレーする11人こそがチームの代表であり、「チームに勝利をもたらすことができる選ばれし者」

仮にこの考えが正しいのであれば、指導者(監督・コーチ)はその11人に強い情熱をもって指導に当たることも頷けます。なぜなら、「チームの勝利=自らの評価」なのですから。

しかし、ビジャレアルでは第一にその考えを排除しました。

音を立てない選手に、こちらが音を立てよう。そう私たちは決めた。これは、企業や大人の組織にもあるはずだ。リーダーは、社員やフォロワーの静寂にいかに耳を傾けられるか。それがなかなかできないことが多い。静かだからつい自分のなかで「彼らは問題ない」としてしまう。でも、リーダーが本当にしなければいけないことは何か?と立ち返ると、答えは全員の成長支援に行き着いた。

竹書房「本音で向き合う。自分を疑って進む」より

「音を立てない選手」

この言葉を、僕は一生忘れることはないと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

驚くべきことに、ビジャレアルにはサッカーという枠組みを超えて多くの企業や組織が訪問してくるそうです。

その目的が「彼らの育成哲学を学ぶ為」であることはほぼ間違いないでしょう。

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ビジャレアルの指導者たちは、選手一人一人の成長に最もフォーカスした育成を行っています。それが中長期的に見た時に、クラブにも選手の人生にも大きな実りを与えてくれることを知っているからです。

“一戦一戦を全力で戦う。その上で決した勝敗から何を学び、何を生かすか。”

目先の勝利よりも大切なことを、クラブ全体で共通認識していること。

それこそがビジャレアルの強さの秘密かもしれません。

ご一読いただきありがとうございました^^

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