こんにちは、みくろです。
今回は、クリスマスの奇跡を描いた、村山早紀先生の「さやかに星はきらめき」をご紹介いたします。
- “SFと御伽噺が大好きな人”
- “クリスマスが近づくとワクワクが止まらない人”
- “綺麗ごとと笑われても、世界はもっと希望と優しさで溢れているはずと信じている人”
はじめに
【希望を繋ぐ、聖夜のSFファンタジー】
12月25日。
街はイルミネーションの煌びやかな光と、キリストの生誕を祝う人々の祈り、そしてサンタクロースの訪問を待つ子供たちの歓喜の歌に包まれる。
「1年を通して、世界中が最も一つになる日」と言っても過言ではないのかもしれません。
そんな特別な日を題材に紡がれた、切なくも温かい現代の御伽噺がここにあります。
さぁ、童心に戻って読み進めていきましょう。
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あらすじ
人類が地球を脱し数百年。月に住む編集者キャサリンは、”人類すべてへの贈り物となる本”を作ることに。最果ての星で”神様”が起こした奇跡を描く「守護天使」、少女が疎開先で異星人と出会う「星から来た魔女」など、宇宙に伝わるクリスマスの民話を集める。
早川書房より
心に響いた言葉
宇宙にまだ存在していない一冊の本をイメージし、形にしてゆく作業、リアルな世界に物質として誕生させる仕事のうち、大切ないくつかの過程は、機械には、ひとの手助けをすることまではできても、まだまだ主体的に行うことはできないのだった。
無から有を生み出すことは、人間にしかできない神秘的な仕事なのかも知れない、とキャサリンは思う。
早川書房「さやかに星はきらめき」より
「わたしたちは、ひとりのときもひとりじゃないから。だから、さみしくなんてないのよ」
早川書房「さやかに星はきらめき」より
「どんな暗闇にいても、ひとりぼっちでも、そこに光があれば、ひとは怖くなくなる。自分がどこにいるかわかるし、進むべき道がどこにあるのか、手の中の灯りは照らし出すことができる。
大好きな誰かを照らし出し、見つけて、愛してる、大好きだよ、って、言葉を交わすこともできるでしょう?」
にっこりとサーシャは笑った。「灯りがあれば、未来を夢見る気持ちにもなる。灯りは人間を守る、素敵な光の魔法だって、ぼくは思ってる」
早川書房「さやかに星はきらめき」より
「街も、建物もそうだよ。ひとの手は、幾度も無意悲に街を焼く。けれどひとは、何度でも街を蘇らせる。そして、光を灯す。暗闇に。何度でもね」
早川書房「さやかに星はきらめき」より
「わたしたちの旅は終わらないの。誰かが見た夢は、時を越えて、いつか叶うの。ひとりひとりの人生の旅は終わっても、時の彼方で、いつか誰かが、遠くの地へ辿り着くの」
早川書房「さやかに星はきらめき」より
消えないのだ。命も想いも、なくなるのではなく、見えない欠片になって宇宙に残るのだ。そして後の世に生まれるひとびとの夢や願いの一部となり、誰かを支え、守り、ときに幸せにしたりするのかも知れない。
遠い時の彼方で、昔、誰かが見た夢は、叶うのかも知れない。
遠い時の果てに、一羽の鳥が、目的の地へと辿り着くように。
早川書房「さやかに星はきらめき」より
「本さえあれば、何もいらないかも知れません。ーーーたとえば、そこが遠い星の海の波方で、ひとりきりの宇宙船で旅をしているとしても、傍らに本があれば、寂しくないですから。だって、無数の言葉や誰かの想いがー魂が、形になってそこにあるのと同じですからね。ひとりでも、ひとりきりの旅じゃない」
早川書房「さやかに星はきらめき」より
文字を書くということ、それを文章にし、束ねて本にするということは、時に流されいつか消えてしまうだろう想いやささやきを、言葉を形にし、つなぎ止めようとする行為ーーー祈りのようなものだと彼女は思っている。
形にしておけば、どこへも行かないし、忘れられることもない。命も願いも、歴史も文明も、誰かがここにいたということも。
早川書房「さやかに星はきらめき」より
ひとの願いが魔法を生み出すことがあるのかも知れない。キャサリンはそう思った。
もしかして、神様は存在しないとしても、ひとの願いは魔法になり、奇跡になって、誰かを守るのかも知れない。見えない優しい腕で。
早川書房「さやかに星はきらめき」より
「わたしは不思議を信じませんけれど、ひとの祈りや願いが宇宙のさだめを変えるなら、それは魔法と呼んでもいいものだと思っています。命は儚く、生まれては消えてゆくものですが、祈りと願いは、その儚く無力な命が持つ、偉大なる力だと。ひとりひとりの夢は生きているうちに叶わずとも、いつか時を越えて、どんな困難にも打ち勝ち、過去の世界に倒れた誰かの祈りと願いを叶えてゆく、そんな奇跡の力を、いわば魔法の力を、銀河系に生きる命は持っているのだと。
宇宙の星の輝きと輝きの間を埋めるのは、漆黒の闇と死と哀しみの記憶ではなく、いまを生きるたくさんの命たちの夢や未来への祈りーーそして希望、遠い誰かに投げかける、無限の慈しみのような気がするのです」
早川書房「さやかに星はきらめき」より
感想
時間の尊さ / 命の尊さ
終わることを意識し始めた時、時間は初めて形を変えます。
そして、人は初めてその尊さに気付くのです。
少しイメージをしやすくしてみましょう。
① 学校の卒業式 前日
② 旅行の最終日 前日
③ 仕事の資料提出期日 前日
いかがでしょうか?
①②のように、「寂しい」「帰りたくない」「まだやれることがある」といった感情から、③のように、「準備万端だ」「間に合ってない」「準備できたが心配だ」といった感情まで、心はさまざまな表情を見せてくれます。
それというのも、時間が形を変えたから。
終わりを意識していなければ、この感情は起こり得ないのです。
人の命に終わりがあるように、すべからく全ての命には終わりがあります。
それは、星という生命体である地球も例外ではありません。
本書は、クリスマスと共にそんな地球と命をもテーマにしているのです。
イヌビト / ネコビト / トリビト
本書の舞台は、戦争や環境汚染等の様々な理由から、地球に人が住めなくなってしまった未来。
そこには、イヌビト・ネコビト・トリビトといった新しい種族の人類が、月を新たな居住地として暮らしていました。
彼らはその名にあるように、犬・猫・鳥を祖先に持ち、進化した人類です。
外見の特徴だけでなく、どうやら性格や思考の面も引き継いでいるようで、それは彼ら自身も全てを理解しているわけではない様子。
「本能的に理解している」といった方が正しいのかもしれません。
ネコビトの編集者であるキャサリンは、“人類すべてへの贈り物となる本“を作ることになり、クリスマスの民話を集めることになります。
その民話それぞれが今作の短編として描かれています。
ページをめくる気分は、まさにキャサリンの隣で伝え継がれる民話を聴いているよう。
とても不思議なのですが、それは僕たちが犬や猫や鳥といったパートナーと共に時を過ごす感覚ととても近しいものでした。
実家で共に暮らしていた犬の気配をすぐ傍に感じ、懐かしさにふと頬が緩んでしまいました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「地球に住めなくなった」
これは本作の設定ではありますが、果たして「ただの設定という認識が正しいのでしょうか?」
人類は年々進化し、それに伴って暮らしは便利になってきました。
その反面、今なお戦争や環境問題は解決されず、むしろ徐々に加速しているのではないかと思ってしまうほど。
この物語は、クリスマスの奇跡を描きながら、今を生きる人類に警鐘を鳴らしてくれています。
「今ならまだ間に合う」
「手と手を取り合おう」
そんな声がページをめくる毎に聴こえてくるのです。
人間の手は、お互いを傷つけ合い、星の寿命を削るためにあるのではありません。
大切な誰かや何かを想い、抱きしめ、守り、愛するためにあるのです。
未来を担う小さな子どもたちへ。
小さな子どもたちだった大人たちへ。
この御伽噺は、きっとすべての人たちの心に響く大切な宝物になるでしょう。
ご一読いただきありがとうございました^^
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