こんにちは、みくろです。
今回は、2023年本屋大賞第2位に輝いた、安壇美緒先生の「ラブカは静かに弓を持つ」をご紹介いたします。
【第6回未来屋小説大賞受賞】
【第25回大藪春彦賞受賞】
【第20回本屋大賞第2位】
- “過去に縛られた生き方を変えたい人”
- “音楽への愛が止まらない人”
- “もう一度人を信じてみたい人”
はじめに
【スパイ×音楽小説】
おもしろそうな予感しかしないキャッチコピーに、たった今心を躍らせた読書家の皆様。
ご安心ください。本書はその期待を裏切ることはありません。
それどころか、その期待を遥かに上回る感情の波を感じさせてくれることをお約束いたします。
さぁ、早速本書の感想を綴っていきましょう。
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あらすじ
少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……想像を超えた感動へ読者を誘う、心震える“スパイ×音楽”小説!
集英社より
心に響いた言葉
「具合が悪い時に他人の百円の心配をしない。百円なくても俺は死なない」
集英社「ラブカは静かに弓を持つ」より
振動する弦の動きを見ていると、目の前の世界そのものがぼやけてしまう。その乱視めいた没頭だけが、瑣末な怒りも、染み付いた恐怖も、遮断する。
集英社「ラブカは静かに弓を持つ」より
「橘君は誰のためにステージに立つんだ?君が出るのは発表会だろ。発表会なんていうものは、気持ちよく演奏出来さえすればそれで万々歳なんだよ。逆に言えば、ちゃんと自分が気持ちよくなれるように弾いてやらなければダメだ。君はこの曲をどう弾きたい?一回、二回のミスに怯えて、チェロをきれいに響かせることを諦めるなんてダサい考えは捨ててくれ」
集英社「ラブカは静かに弓を持つ」より
ブレイクスルーした瞬間に、あらゆる問題は消失してしまう。
集英社「ラブカは静かに弓を持つ」より
「曲を表現する時に一番、何が重要なのか?それはイマジネーションだ。的確なイマジネーションこそが、音楽に命を与える。プロもアマも関係ない。自分が育てた想像力を、この弦の上に乗せるんだ」
集英社「ラブカは静かに弓を持つ」より
「一般的な基準で自分の楽器を選ぼうとするなよ。ピンと来るのか、ビビッと来るのか、感覚は人それぞれだけど、橘君がいいなと思ったチェロが、世界で一番いいチェロだ。そりゃ産地とか、工房とか、言い出したらキリないさ。だけど、それもある意味では他人の基準だろ?
俺の楽器は俺のものだし、橘君の楽器は橘君だけのものだ。自分のインスピレーションを信じるしかないだろ」
集英社「ラブカは静かに弓を持つ」より
透明な壁の向こうと自分との間には、著しい段差がある。世界のありのままの姿を、オートマティックに捻じ曲げてしまう分厚い壁。みずからの不信が作り上げたその巨大な防壁が、目に映るものすべてを脅威に変換してしまう。
この脅威は、幻だ。
手を伸ばすべき現実はいつも、恐れの向こう側にある。
集英社「ラブカは静かに弓を持つ」より
時間はただ前に向かって突き進むのみで、逆行を許さない。
集英社「ラブカは静かに弓を持つ」より
感想
【裏切りと信頼と愛と】
結論から言いますと、この物語の魅力は2つ。
- 主人公、橘樹の成長と音楽の力
- スパイ小説ならではのスリル
橘樹の成長と音楽の力
過去にトラウマを持ち、心を閉ざしていた橘。
誰とも連絡を取ることもなく、ただ繰り返される日常をやりすごす。
そんなある日、上司命令で潜入を余儀なくされた音楽教室に通い始めたことで、彼の人生が大きく動き出します。
誰しもが、大なり小なり思い出したくもない過去があると思います。
その過去に縛られ、人生の歩み方が分からなくなってしまうなんてこともざら。
橘はまさにそのタイプで、だからこそ彼の姿を自分に重ね、強い共感と共にページをめくる人が多いような気がします。
意外かもしれませんが、そんな過去を乗り越えるきっかけは、思いもしない場所にあったりします。
それが、橘にとっては音楽教室でした。
- 音楽教室のチェロ講師、浅葉
- 同じ学び舎で音楽を楽しむ仲間たち
彼らが何気なくかける言葉、そして音楽の力が、橘の凍った心をゆっくりと溶かしていきます。
その過程を共に歩むことで、最後の1ページを読んだ時の圧倒的な感動に心が震えること間違いなしです。
スパイ小説ならではのスリル
スパイ。
秘密裏に敵や競争相手の機密情報を調べ得る人のことです。
仲間のふりをして敵の組織に潜入したり、はたまた他人のふりをして近寄ったり。
「バレたら最後」というハラハラ感は、スパイを題材にした小説ならでは。
橘は後者に近い立ち回りで、音楽教室に潜入します。
潜入当初の橘は「バレたら最後」の感覚だけでしたが、時が進むにつれ、それ以上に失いたくないものに気づくことになります。
- 音楽教室に隠された秘密とは?
- 橘はスパイをやり遂げられることができるのか?
最後まで目が離せない展開に、わくわくが止まりません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
個人的に、講師の浅葉がめちゃくちゃ人間味が溢れていて大好きなんです。
本気で怒るし、本気で笑うし、何より本気で音楽を愛しているから。
彼の言葉の端々に溢れる、音楽への愛と、音楽を愛する人への愛をぜひ感じて頂きたいと思います。
そして本作のテーマとも言える、「信頼と裏切り」。
信じること。
裏切ること。
一見真逆のように見えますが、それは表裏一体。
そのきっかけも、ボタンの掛け違い程度でしかありません。
しかし、裏切る心を持つのも人ですが、裏切った心を救うのもまた人だったりします。
凍った心で世界と繋がることを拒絶していた橘が、音楽を通して生きる喜びや人と繋がる楽しさに気付いていく。
そんな橘の揺れ動く心情と、地下室でのスリルな空気感を、チェロの美しく重厚な音色が表現します。
本屋大賞ノミネートの名にふさわしい、至極の音楽小説をぜひご覧ください。
ご一読いただきありがとうございました^^
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