【頼りにしているぞ、トリスタン】レーエンデ国物語 / 多崎礼【あらすじ・書評】

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読書記録
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こんにちは、みくろです。

今回は、著名なファンタジー作家、全国の書店員からの絶賛の声が止まない、多崎礼さんのファンタジー作品、「レーエンデ国物語」をご紹介いたします。

(※少々ネタバレ含みますので、本書を0知識で読みたい方はご注意ください)

この記事はこんな方にオススメ
  • 「自分の人生を生きる」本当の意味を知りたい
  • 涙を流すほどの友情と愛情の物語に出会ってみたい
  • ファンタジーが大好きな子供だった大人たち

はじめに

「革命の話をしよう」

この一節から始まる物語が描き出したのは、時が経つことを忘れさせるほどの圧倒的な没入感。

  • ハリーポッター
  • 指輪物語
  • 獣の奏者
  • 精霊の守り人

名立たる作品が金字塔を立ててきた、ファンタジー界。

近い将来、この物語も必ず、このレジェンドの隣に名を連ねるでしょう。

それでは、早速感想を綴っていこうと思います。

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あらすじ

異なる世界、西ディコンセ大陸の聖イジョルニ帝国。母を失った領主の娘・ユリアは、結婚と淑やかさのみを求める親族から逃げ出すように冒険の旅に出る。呪われた地・レーエンデで出会ったのは、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタン。
空を舞う泡虫、琥珀色に天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城。ユリアはレーエンデに魅了され、森の民と暮らし始める。はじめての友達をつくり、はじめて仕事をし、はじめての恋を経て、親族の駒でしかなかった少女は、やがて帰るべき場所を得た。時を同じくして、建国の始祖の予言書が争乱を引き起こす。レーエンデを守るため、ユリアは帝国の存立を揺るがす戦いの渦中へと足を踏み入れる。

(講談社より)

心に響いた言葉

「お前のことはわからないが、自分のことはよくわかっている。お前を信じるに足る人間だと判断した、俺の直感を俺は信じる」

講談社「レーエンデ国物語」より

「団長のような英雄になりたい。ずっとそう思ってきました。でも気づいたんです。歴史に名を残すような特別な人間は、ほんの一握りしかいないんだって。残念ながら、僕はその一握りには選ばれなかった。歴史に埋もれていく有象無象の一人にしかなれなかった。それが悔しくて自暴自棄になった時もありました。けど最近、そういう人生も悪くないなって思ったんです。取るに足らない、おおよそ無価値な人生でも、僕にとって価値があるなら、それはとても幸せなことなんじゃないかって」

講談社「レーエンデ国物語」より

「僕の望みは、何ものにも縛られることなく自由に生きること。自分が正しいと思う道を進むこと。悔いのない人生を生き尽くし、満足して笑って死ぬこと。それだけです」

講談社「レーエンデ国物語」より

自由に生きるということは、自分で自分の進むべき道を選ぶということ。自分以外の人間にその答えを求めてはいけない。

講談社「レーエンデ国物語」より

「本当は、わかってたの。私は空っぽだって。シュライヴァの家名がなかったら、何の価値もないんだって。それを認めるのが怖かった。だから何を言われても逆らわなかった。これまで何ひとつ、自分で選んでこなかった。今さら自由に生きたいと思っても、改めるのは難しいわ。自分で答えを見つけられるようになるまでには、長い長い、気が遠くなるくらい長い時間が必要だわ」

「でも、見つけてみせる。私の価値を、私が生まれてきた意味を、自分の頭で考えて、答えを出してみせるわ」

講談社「レーエンデ国物語」より

「これはあたしの持論なんだけど、人間は誰でも役目を背負って生まれてくる。どんな人間にも生涯かけて成すべき仕事がある。自分には何もない、何もなかったって言う者は、まだそれを見つけていないか、見つけたのに目を逸らしているか、そのどちらかなのさ」

講談社「レーエンデ国物語」より

「心の声に耳を傾けてごらん。きっと聞こえてくるはずだよ。自分が何を求めているのか。そのために何を選び、何を捨てるのか。あんたにならわかるはずだよ」

講談社「レーエンデ国物語」より

「正しい道を選んだつもりでも、よくない結果を生むことだってあるだろうし、私みたいに後悔してても、結果としてはよかったって場合もある。どっちに転ぶかわからないなら、自分がしたいようにすればいいと思う。しなかったことを後悔するよりも、してしまったことを後悔するほうがいいって、私は思うから」

講談社「レーエンデ国物語」より

「自己犠牲なんて欺瞞です。ただの自己満足です。自分の魂を救えない人にどうして人が救えるんですか。自分自身さえ救えない人に、国や民が救えるわけないじゃあないですか!」

講談社「レーエンデ国物語」より

「たとえ世界中の人間が『不可能だ』と叫んでも、俺が諦める理由にはならない。俺が可能だと信じる限り、立ち止まる理由はないんだ」

講談社「レーエンデ国物語」より

「あんたは他人に求められる自分こそが理想の自分だと思ってるみたいだけど、理想の自分ってのは自分がなりたい自分のことをいうのさ。それを履き違えちゃいけないよ」

講談社「レーエンデ国物語」より

「生きるってのは楽じゃない。喜びや幸福は刹那の光、それ以外はずっと闇ん中だ。ヘマして恥かいて失意と絶望の泥沼を這いずり回る。それが人生ってもんなのさ。だからこそ自分が歩く道は自分で選ばなきゃいけないんだ。その結果、大失敗をやらかして血反吐を吐くほど苦しむことになっても、自分で選んだ人生ならまだ納得がいくからね」

講談社「レーエンデ国物語」より

「振り返るな!立ち止まるな!前だけを見て走り抜け!」

講談社「レーエンデ国物語」より

感想

「感動した」

「素晴らしかった」

「最高だった」

賞賛の言葉は多々あれど、その全てがチープに感じてしまう。

そんなとんでもないレベルの名作でした。

先にひとつだけ難点をお伝えしておきます。

それは、登場人物が多く、しかも横文字の為、最初は物語に入り込むのに一苦労だということ。

なので、“主人公3人だけ覚える!”と切り替えたところ、これが功を奏しました。

  • 騎士団長にして英雄、ヘクトル・シュライヴァ
  • ヘクトルの娘、ユリア・シュライヴァ
  • レーエンデの射手、トリスタン・ドゥ・エルウィン

全てがこの3人を中心に展開される為、その他の登場人物は関連して自然と頭に入るわけです。

この方法はぜひお試しいただきたい。

彼らが紡ぎ出す、「愛情」と「友情」に満ち溢れた物語に、心を大きく揺さぶられました。

家族愛

ユリアは父のヘクトルと2人暮らし。

母のレオノーラは、ユリアが生まれて間もなく亡くなってしまったのです。

だからこそ、2人の家族愛の強さは物語のあちこちで感じられます。

騎士団長の役務を果たす為に家を空けることの多いヘクトルを、ユリアは英雄の娘である誇りを胸に、寂しさを押し殺しながら帰りを待ち続ける日々を送っていました。

ーーー

ユリアが15歳になったある日、ユリアはヘクトルと共に「呪われた地・レーエンデ」へ旅に出ます。

そこで出会う人々、環境は、ユリアの生き方に大きな影響を与えていきます。

もはや、“これはユリアの成長を描いた物語”といっても過言ではないほどに。

ーーー

ここで一つ。

「なぜ、レーエンデは呪われた地と呼ばれるのか?」

それは、銀呪病“と呼ばれるレーエンデ特有の風土病がある為です。

銀呪病の特徴
  • 治療法も特効薬もない、いわゆる不治の病。
  • 満月の夜、森が幻の海に包まれ、幻の魚が泳ぐ時、その海にのまれると罹患してしまうと言われている。(必ず罹患するわけではない)
  • 銀の鱗が少しずつ身体に広がっていく。動物や植物も罹患するが、なぜか死に至るのは人間のみ。

ーーー

実は、ヘクトルの兄(ユリアの叔父)であるヴィクトルは、シュライヴァ州の首長である為、ヘクトルとユリアは貴族でもあります。

本来、貴族であるユリアが長期間の旅に出る、ましてや目的地が「呪われた地・レーエンデ」であることなど許されるはずがありません。

しかし、ここに記すことはできませんが、ヘクトルにはユリアを連れ出したかった本当理由が、またユリアにもどうしてもレーエンデに来たかった隠された目的があったのです。

それは私たちにもどこか共感できるものであり…この先は、本書にて。

ーーー

…という2人の旅の中、家族愛を最も感じたヘクトルの言葉がこちら。

「ユリアを泣かせたら殺す」

「遊びで手を出したら殺す。生半可な気持ちで言い寄っても殺す。だが心からユリアを愛してくれるなら遠慮はいらない。命懸けで口説き落とせ。それだけの価値はある」

講談社「レーエンデ国物語」より

わかりますか?

このヘクトルのユリアに対する大きな愛情、そして絶対的な信頼が。

親子の双方向の温かい想いに、「こんな家族でありたい」と心から感じる瞬間でした。

この言葉に限らず、2人の関係性の素晴らしさは物語全体を通して光っていますので、ここも楽しめるポイントですよ。

友情

個性豊かな登場人物の多い本作。

友情と言えば、やはりヘクトルとトリスタンの2人を推してしまいます。

ーーー

ヘクトルのレーエンデ案内人として旅に同行するのが、射手トリスタン。

彼は元傭兵であり、弓の名手。実はヘクトルとも面識があり、彼を心から尊敬していました。

しかし、彼には隠された…というより、抱えている大きな秘密があり、物語を通して少しずつ明らかになっていきます。

ヘクトルも最初はトリスタンを警戒していたものの、ユリアを含めた旅・戦い・生活を通して、彼の本当の姿を知っていくこととなります。

少しずつですが、確かに育まれていく彼らの友情、いや、絆と呼ぶにふさわしい関係性には胸が熱くなりますよ。

ーーー

「頼りにしているぞ、トリスタン」

講談社「レーエンデ国物語」より

本書のタイトルにも引用したこのセリフ。

まさにヘクトルがトリスタンに放った信頼の言葉なのです。

ここにたどり着くまで、どんなやり取りが交わされるのかぜひ楽しんでいただけたらと思います。

考えられないかもしれませんが、このヘクトルとトリスタンという戦場を駆け回った勇士が、お互いに軽口をたたき合うシーンが随所にあり、彼らの心根の温かさを微笑みながら見られますから。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本書の帯に、名立たる作家さんが推薦の声を綴っているのですが、特に震えたのが恒川光太郎さんの言葉。

「読後、放心し、空を見上げ、トリスタン、と呟く」

講談社「レーエンデ国物語」書籍帯より

まさにこれなんです。

最後のページを閉じた時、「トリスタン…」と心の底から声が溢れました。

彼ほど人間味に溢れ、心惹かれる個性を持つキャラクターは初めてであり、この先忘れることはないでしょう。

ーーー

レーエンデの未来とは?

始祖の予言書のもたらす争乱とは?

彼らの旅の行く末は、ぜひその目で見届けてください。

壮大な物語は、まだ始まったばかりなのですから。

さぁ…

「革命の話をしよう」

ーーー

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