【見えないから見える光】ブラインドから君の歌が聴こえる / サミュエル・サトシ【あらすじ・書評】

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読書記録
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順風満帆に思えていた人生に、突然大きな壁が立ちふさがる。

「こんなはずではなかった」

「なぜ自分なのか」

そんな絶望の淵から立ち上がっていく、強さも弱さもさらけ出した男の闘う姿を描いた作品をご紹介いたします。

【HOME MADE 家族のMC KUROの小説第2弾】

あらすじ

天才的な耳を持ち、人気ヒップホップグループで大活躍していた啓史。ところがメジャーデビュー直前に病で視力を失った。絶望の中、幼なじみの彩に連れられてブラインドサッカーと出合う。仲間との交流で少しずつ自分の居場所を見つけてゆくが、大舞台の最中に思わぬ事件に巻き込まれ…啓史は壁を乗り越え、自分を、そして仲間との絆を取り戻せるのか?超絶の“音”の世界で繰り広げられる、感動の青春ストーリー!

印象に残った言葉

一体、自分と障害者を隔てていたものはなんだったのだろう。

今さらながら思う。

ちょっと前までは偏見を持ってはいけないと言いながらも、心のどこかで憐んでいた。なるべくそういった人たちを直視しないようにして、自分の人生に直接関係がないからと、どこかで臭いものに蓋をしていたように思う。

だが、障害者と健常者もたいして特別なことはない。

学校に行けば自分と波長が合う人間もいれば、合わない人間もいる。

目が見えてできないこともあれば、目が見えなくてもできることがある。

ただそれだけのことだ。

全てをやれる必要はないし、やれる人間もいない。

いつも大切なことは、あとになってから気づく。逆に言えば、目が見えていたときのほうが自分は盲目だったのかもしれない。

仲間を信じること。

「この世界はさ、想像力が欠如してるよ。目が見える奴に限って特に、人種とか肌の色とかで判断してさ。健常者の目線で物事を決めて、だけど本当に大切なことは、目に見えないものばかりなんだ。絆とか友情とか、愛とか。みんなそれを言うとすぐにバカにするけどさ。だけど見えるものしか信じないからわかんねぇんだよな」

感想

“ブラインドサッカー”という、視覚に障がいのある選手が行うサッカーにスポットを当てた作品。

ちなみにですが、ブラインドサッカーをご存じの方は、どのくらいいらっしゃるのでしょうか?

私も幼少期からサッカーを長年続けておりますが、その知識はほぼゼロに等しいです。

「同じサッカーではあるけれど、何がどう違うのだろう?」

…そんな単純な好奇心で読み始めたら、その奥深さに度肝を抜かれました。

スポーツでも仕事でも、”信頼関係“というものは非常に大切なものです。

例えばサッカーにスポットを当ててみると、選手は試合中に常に首を振り、各選手の動きや試合の流れを把握しながらプレーしています。

頭の中に最新の情報を持ち続けることで、一瞬先の未来を予測して動いていくわけですね。

(もちろんそう簡単なものではないですが。笑)

ただそれがブラインドサッカーになると、視覚から得られる情報が限りなく0に等しくなるわけです。

「あそこにスペースがあるから、走ってそこでパスをもらいたい」

この難易度が一気に跳ね上がります。

視覚の代わりに、監督・晴眼者であるキーパー、そして”コーラー”と呼ばれるガイドが声掛けをし、選手の目になります。

想像してみてください。

目隠しをしたまま、声掛けで得た情報・周囲の物音だけを基に、目的地に向かって走れますか?

実際やってみましたが、怖いのなんのって。

物音から周囲の状況を把握する能力はもちろん、コーラーとの絶大な信頼関係がないととても前に進むことだってできないです。

そういった観点からだけでも、ブラインドサッカーがいかに”信頼関係”が重要なスポーツかよくわかりました。

他にも、

・音の鳴るボールを使う

・ボールを奪いに行く時は、「ボイ!」と声を出す(出さないと反則)

等のルールがあります。

作品を読み終えて、改めてブラインドサッカーについて調べてみたり、YouTubeで試合観戦をしてみたり。

自然とそうしたくなる魅力がこの作品には詰まっています。

ぜひ読んでみてください。

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