こんにちは、みくろです。
大学駅伝の花形、「箱根駅伝」。
この舞台を目指すのはランナーだけではありませんでした。
今作は、そのランナーを食で支えることを選んだ一人の男の物語。
あらすじ
あの眞家早馬が「駅伝」の世界に戻ってきた!大学卒業後、いったんは就職した早馬は、弱小・紫峰大学駅伝部のアシスタントコーチとして、部員たちと箱根駅伝初出場を目指すことになる。学生時代、長距離走選手として夢を果たせなかった早馬。数々の挫折を経験した者として部員たちに寄り添う。「箱根駅伝に出たい」「箱根を走らせてやりたい」。徐々にひとつになっていく部員たちの熱い願い、そして早馬が見つけた新たな夢は、果たして叶うのか…?熱涙間違いなしの傑作スポーツ小説!
「BOOK」データベースより
心に響いた言葉
諦めたつもりなんてないのに、いつの間にか胸に灯っていた炎が弱まっている。もしかしたら自分もそうかもしれない…なんて思うと、とても怖い。
「弟に対する《嫌い》は、《可愛い》の反対だから。《好き》は別のところにあるの」
「箱根の常連だろうと、そうじゃなかろうと。オリンピックを目指していようと、大学卒業後に競技を引退しようと。ランナーとして強くなるためには、走る意味が必要なんだよ」
「箱根駅伝は、『箱根を走りたい』って願いの、もう一歩先を見つめられる奴が、走れる場所なんだって」
「競技の中でもそうだし…きっと、それ以外でもなんでもそうなんだろうけどさ。大事なことって、意外と言葉にできないことが多いから。無理に言葉にしなくていいんだよ」
「トップランナーっていうのは、覚悟して走ってるんだよ。自分の《走り》を武器に生きていくんだっていうね。留学生だってそうだ。日本に来て初めて《タスキ》の意味を知って、気候とか食べ物とかも合わない中、必死に走ってるんだよ」
「いいか、千早。努力は人を裏切るよ。ここぞというときに、裏切るよ」
「努力は人を裏切らないとか、いつか自分に返ってくるとか。俺、そういう言葉が大嫌いなんだよ。そんなのはさ…裏切られた傷を癒すために、『この努力は未来に別の形で実を結ぶに違いない』って思い込みたいだけだ。そうやって取り繕うしかないくらい、当然って顔して裏切るよ」
努力は、裏切る。ここぞってところで裏切る。
裏切られたお前は、ここからどうする。
裏切られた自分を、お前は愛せるか。
感想
タスキメシ第2作。前作で受けた衝撃は間違いありませんでした。
前作の感想はこちら⇩
今作の舞台は大学、そして長距離ランナーの夢の舞台、「箱根駅伝」。
- 弟の春馬
- 高校大学と共に戦った助川
- ライバルの藤宮
彼らが熾烈なオリンピック出場権争いをする中、主人公・眞家早馬は大学陸上部の食事管理をしていた。
なぜ早馬はそこにいるのか?
早馬がここに至るまでの過程と、その想いについてはここに綴ることは控えておきます。
物語のとても重要な部分となりますので、ぜひ本書を手に取ってお読みいただきたいのです。
食事の大切さ、そして怪我の辛さを誰よりも理解している早馬だからこそ、現役のランナーたちに伝えたい想いがありました。
それはそうに決まっていますよね。自分が歩んだ道のり、経験が良い物であればよいですが、辛い物であれば絶対に経験させたくはないですから。
しかしながら、額賀さんの感情表現の豊かさには毎回心を震わせられます。
物語後半なんて、もう涙腺うるうるで文字がぼやけるのなんの。
“言葉に微細な感情の揺らぎをのせる”
これはもはや「魔法使い」と呼んでもいい、と私は勝手に思っています。
ですので、彼女は魔法使い。
統編となる「タスキメシ 五輪」も昨年末に刊行されているので、早速読んでみようと思います。