あらすじ
箱根駅伝出場を逃がした大学のなかから、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、いわば“敗者の寄せ集め”の選抜メンバーは、何のために襷をつなぐのか。東京~箱根間往復217.9kmの勝負の行方は―選手たちの葛藤と激走を描ききったスポーツ小説の金字塔。巻末に、中村秀昭(TBSスポーツアナウンサー)との対談を収録。
(「BOOK」データベースより)
印象に残った言葉
「普通のチームは、自分たちだけの事情じゃなくて、他にもいろいろなものを背負ってる。いいことかどうかは分からないけど、大学当局とかOB連中の期待なんかをね。だけどここに集まった選手には、そういう重荷がない。皆自分のためだけに走るわけだから、選手自身で目標を決めるべきでしょう。俺の仕事は、そのためにちょっとだけ背中を押してやることだよ」
「本人にも分からない。俺たちにもわからない。それが駅伝ってものだよ。考えてみれば、こんなに人間臭い競技もないよな。ほんのちょっとした怪我で走りは滅茶苦茶になるし、レース中に故障が起きる可能性だって小さくない。そうじゃなくても天気に邪魔されたりとか。自分たちでコントロールできないことをあれこれ考えて無駄な予想を立てるのは阿呆らしい、そう思わないか?」
「予想と目標は違うんだよ」
待ってろよ、浦。トップでお前に襷を渡してやる。何だかんだ言っても、お前たちの望み通りになったじゃないか。当然お前も、このまま逃げ切ってくれるんだろうな。俺が、この俺が一位でつないだ襷だぜ。トップで大手町に帰って来なかったら、殺してやる。
「結果だけを見ちゃいかんよ、過程も大事なんだ」
感想
初の堂場瞬一さん作品。
おもしろかった。
すごくおもしろかった。
私の大好きな作品の一つでもある、
三浦しをんさんの「風が強く吹いている」と同じく、
箱根駅伝を題材にした作品。
しかし、内容もフォーカスも全く異なり、とても新鮮でした。
今作は、箱根駅伝に出場することが出来なかった大学から選抜された即席チーム、
「学連選抜」にフォーカスをおいた作品です。
これまで
「学連選抜ってなんなんだろう?」
と思いながら箱根駅伝を観戦していましたが、その全てがすっきり解決。
なるほどなぁと。
選手一人ひとりにも様々な想いや葛藤があって、
それを抱いて走るんだ。
内容に少しだけ触れさせて頂くと、
圧倒的な実力を持ちながらも、己の為にしか走らない男・山城が、
学連選抜として走る箱根を通して少しずつ変わっていきます。
その心境の変化に、気が付いたら吸い込まれていました。
「おまえ、本当はいいやつじゃん」
自然とそう思える不思議な感覚です。
こんなにおもしろい陸上小説がまだあったんだなぁ。
本の世界は果てしないことを改めて認識することができました。
これからも少しずつ発掘していこう。
続編の「ヒート」も楽しみすぎます:)