こんにちは、みくろです。
今回は、青山美智子先生の「人魚が逃げた」をご紹介いたします。
- “人魚姫の物語に心が躍った人”
- “【ファンタジー×リアル】の新感覚小説を読んでみたい人”
- “人間の本当の温かさに触れ、まーるい気持ちになりたい人”
はじめに
「人魚が逃げた」
…え?
しかも、言っているのはガチの王子様。
しかも、場所が銀座。
こんなに興味をかき立てられる物語の始まりを、誰が見逃すというのでしょうか。
さぁ、感想を綴って参りましょう。
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あらすじ
ある3月の週末、SNS上で「人魚が逃げた」という言葉がトレンド入りした。どうやら「王子」と名乗る謎の青年が銀座の街をさまよい歩き、「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」と語っているらしい。彼の不可解な言動に、人々はだんだん興味を持ち始め――。
そしてその「人魚騒動」の裏では、5人の男女が「人生の節目」を迎えていた。12歳年上の女性と交際中の元タレントの会社員、娘と買い物中の主婦、絵の蒐集にのめり込みすぎるあまり妻に離婚されたコレクター、文学賞の選考結果を待つ作家、高級クラブでママとして働くホステス。
銀座を訪れた5人を待ち受ける意外な運命とは。そして「王子」は人魚と再会できるのか。そもそも人魚はいるのか、いないのか……。
PHP研究所より
心に響いた言葉
そういえば王子は人魚の話をしていたけれど、足を持たない人魚は、好ましくない世界から抜けるとき、どこを洗うのだろう?
PHP研究所「人魚が逃げた」より
「性別は関係ないと思いますよ。うまくやってる女性は、女だからできるわけじゃなく、試行錯誤して考察して実践をくり返すうちにうまくできるようになっただけです。男性も同じことをすれば、同じようにできるはずです」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
「言葉なしで相手の気持ちを理解するなんて、とても難しいことです」 王子がこちらを向く。 昼の陽を受けて王冠がきらりと光った。僕は続ける。 「でもだからこそ、目や仕草が表しているその人の想いを、見逃してはいけないのかもしれない」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
モノよりお金。もっとも、そんなふうに思わざるを得ないほど、今の若者にとってこの社会も大人も信用できないのかもしれない。
PHP研究所「人魚が逃げた」より
「そうですね。得意なことって、やれと言われなくても勝手にやってること、だと思います。親とか友達とか、まわりに誰もいなくても、人が見ていないときにやってしまうこと、それが本当にやりたいことじゃないかなと思うんです」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
「誰よりも憧れがあったのよ。自分の知らない、花や鳥や、森や町に。行ってみたい、見てみたいって。そこで自由にいろんな経験をするための足が欲しいって。いろんなリスクがあることだって、初めから百も五百も承知よ。不安がなかったわけないじゃない。だけど、誰かにやれと言われたことじゃなくて自分が願ったことだから、つらいことも全部引き受けるって、それくらいの強い決意で臨んだのよ」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
単純な美談などではないと、初めて思えた。あのシーンが我々に教えるのだ。ひとりの人間の中に清濁混合の複雑な感情があり、常にその中からいずれかの自分を選び取りながら生きているのだと・・・・・・。
PHP研究所「人魚が逃げた」より
「人と人を繋ぐのは結局、愛とか恋より、信頼と敬意なのよ」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
「嘘と、ニセモノは違うのです。私たちは、嘘に助けられながら、遥かなる虚構を生きている。嘘の本当というものがあるんです」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
「大丈夫。顔を上げて、元気でおやんなさい。『✕』って書いてバツイチっていうけどね、バツじゃなくて掛けるって読めばいいんだよ。失敗のペケじゃない、経験の掛け算さ。これからもっともっと、味わい深い人生になる」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
たったひとり、自分にだけ映し出された物語を生きる私たちの人生に、ハッピーエンドもバッドエンドもなかった。ぐるぐるとめぐる時計の針のように、どこもかしこもすべてが出発点で、すべてが着地点だった。
もう、過去を否定し忘却しようとするのはよそうと、私は心に決めた。 時をぜんぶ丸ごと受け入れ抱きしめることで、きっと今を生きていける。 こつこつとねじを巻きながら。 いつもわずかに遅れてしまう時刻を、ゆっくりと合わせながら。
PHP研究所「人魚が逃げた」より
つくづく、物語と出会うタイミングはそれぞれに不意打ちで、自分には予測できない意味を持っているように思う。
PHP研究所「人魚が逃げた」より
「自分の良さも悪さも、客観的にちゃんと認識するのは簡単じゃないわ。だから、人から言われたことは、いったん素直に受け止めなさい。他者から映る自分をひとつの指針にするのよ、参考程度でいいから」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
「人っていうのはね、毎日見ているものがそのまま心と体に出るのよ。気持ちいいものに囲まれて、美しいものを見なさい」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
そんなことはありえないって?
PHP研究所「人魚が逃げた」より
でも、あなただって、ほら。
すぐ目の前にいる人が絶対に現実世界の人だなんて、証明できるでしょうか?
感想
当たり前のありがたさ
気付かれにくい「名も無き家事」。
それは料理であり、掃除であり、洗濯であり…細分化したらきりがないもの。
ただ、「それこそが当たり前の日常を当たり前に作っている」ということに、どれだけの人が気付いているでしょう?
でも、大丈夫。
あなたの愛情は、確り届くべき人に届いていますから。
本書の第2章、こんな母娘の会話があります。
「こんなに素敵なものを毎日作ってるなんて、田中さんって、すごいわねえ」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
私がつぶやくと、菜緒が言った。
「お母さんだって、作ってくれたじゃない」
「え?何を?料理とか?」
「まあ、それもそうなんだけど、なんていうか・・・・・・」
私がきょとんとしていると、菜緒はちょっとはにかんだように続けた。
「毎日を、毎日作ってくれたよ」
こんな言葉を子供からもらえたら、どれほど嬉しいことでしょう。
自分が思う子供からの見え方と、実際の子供からの見え方は、想像以上に違うものなのかもしれません。
子育て真っ只中の僕の答え合わせはもう少し先になりそうですが、また一つ未来の楽しみが増えました。
救いの言葉
「たかが一言、されど一言」
本書の第4章、こんな夫婦の会話があります。
「原稿、書いてたの?苦戦中?」
PHP研究所「人魚が逃げた」より
その呑気さにちょっとイラついて、俺はつっけんどんに答えた。
「うん。まあ、読めば三分で終わるような短い話だけど」
「そうなんだ」
多恵はいつものように「よくわからないけど」と前置きし、こう続けた。
「だけどその三分の間に、あなたが書いた一行で人生が変わる人がいるかもしれないんでしょう?」
誰かの「がんばれ」に120%の力が出せたり、誰かの「うざい」にへこんだり。
言葉は時に人を励ますことも、悲しませることもできる諸刃の剣。
それほどまでに言葉の力が絶大であることを、人は意外と知りません。
それはもしかしたら、その効力とは釣り合わないほど簡単に言葉を操れるからなのかもしれません。
だからこそ、言葉を正しく、大切に扱える人はとても素敵に見えるのです。
せっかく言葉を話せるのだから、どこかで誰かの心を温かくできるような言葉を紡げたら、それはそれは嬉しいものじゃないですか。
まとめ
いかがでしたか?
今作の特徴である、「ファンタジーと現実の境目があってないような不思議な世界観」は、読者の度肝を楽勝でぶち抜いてきます。
そこに青山先生ならではの心温まるストーリーが重なってくるので、もう読後感の良さは言わずもがな抜群です。
- 人魚はいるのか、いないのか
- 王子は人魚を見つけられるのか
- これは現実なのか、ファンタジーなのか
その全ての答えは、ぜひあなたの目でご確認ください。
読書人生に刻まれるであろう「リアルファンタジー」がここにあります。
ご一読いただきありがとうございました^^
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