あらすじ
徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ちあがる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く―。日本文化を変えた大計画をみずみずしくも重厚に描いた傑作時代小説。第7回本屋大賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
印象に残った言葉
星は答えない。決して拒みもしない。それは天地の始まりから宙にあって、ただ何者かによって解かれるのを待ち続ける、天意という名の設問であった。
つまるところ暦とは、絶対的な必需品であると同時に、それ以上のものとして、毎年決まった季節に、人々の間に広まる”何か”なのであろう。
それはまず単純に言って、娯楽だった。文字が読めない者も、絵暦を通して楽しむことが出来る。それどころか、今年の大小月の並びが絵の中に隠されており、謎解きのようにして読まねばならない頒暦もあった。そういう遊びが成り立つほどの万人共通の品なのである。
さらにそれは教養でもあった。信仰の結晶でもあった。吉凶の列挙であり、様々な日取りの選択基準だった。それは万人の生活を映す鏡であり、尺度であり、天体の運行という巨大な事象がもたらしてくれる、”昨日が今日へ、今日が明日へ、ずっと続いてゆく”という、人間にとってなくてはならない確信の賜物だった。
感想
初の冲方丁さん。
ずっとこの作家さんの名前の読み方がわからず
「おきかたてい」やら「おきかたちょう」やらと呼んでいましたが、
正しくは「うぶかたとう」さんでした。
大変失礼いたしました。
今作は、私があまり得意ではない時代小説。
どうなることかと思いながら読み進めてた474Pの大作。
正直な感想…
すっごくおもしろかったです:)
やはり、私の日本史の知識が乏しいのもあって、
時代背景や語の意味、役職等、理解が浅い部分も否めませんでしたが、
それ以前に主人公の春海の実直でまじめな姿に魅了されました。
暦を作るという、途方もなく大きな仕事にこつこつと向き合い、
共に尽力した仲間たちの想いを積んで走り続ける彼は
まさに男の中の男…いや、人間の中の人間でした。
三浦しをんさんの「舟を編む」に通ずる、
何かを作ることに生涯をかけた人の物語。
いやぁ…本当におもしろかった。
読み切るのに時間はかかったけれども、
もっと知識を深めて、
もっと時代小説を楽しみたい。
そう心から思えた作品です:)
映画化もされているのでぜひぜひ:)