あらすじ
いじめから、ひきこもりとなった二十四歳の麻生人生。頼りだった母が突然いなくなった。残されていたのは、年賀状の束。その中に一枚だけ記憶にある名前があった。「もう一度会えますように。私の命が、あるうちに」マーサばあちゃんから?人生は四年ぶりに外へ!祖母のいる蓼科へ向かうと、予想を覆す状況が待っていたー。人の温もりにふれ、米づくりから、大きく人生が変わっていく。
(「BOOK」データベースより)
印象に残った言葉
子供だもの、好きなようにすればいいの。その全部が、生きていくための栄養になって、勉強になるのよ。
ふたつの手と手を合わせて、ほっこりと握る。それがおにぎりのかたち。これを食べる人が健康でいっぱいご飯を食べられますようにっていう、作った人の祈りのかたちなんだよな。
自分に備わっている生き物としての本能、その力を信じること。すなわち、生きる力、生きることをやめない力を信じること。
感想
原田マハさんの青春農業小説。
青春というと、爽やかで、恋愛して。
そんなイメージを持つかもしれませんが、この作品はそれだけではなく
“再生“の物語。
ひきこもりと対人恐怖症の若者2人が、認知症の始まったおばあちゃんと共に
田舎で生活を営む。
それだけでとても興味深いのですが、この内容がまた深いんです。
米作りに精を出す彼らの姿を見ていると、
ご飯が食べられるということがどれほど尊いことなのか思い知らされます。
目の前の一粒の米を作る為に、どれだけの人の苦労と、
どれだけの時間が注がれているのか。
先日紹介しました
「幸せの条件 / 誉田哲也」
とはまた別の感覚です。
特に、上部で引用させて頂いた
ふたつの手と手を合わせて、ほっこりと握る。それがおにぎりのかたち。これを食べる人が健康でいっぱいご飯を食べられますようにっていう、作った人の祈りのかたちなんだよな。
という一説がとても印象強く残っており、大好きな言葉になりました。
なにしろ、私自身おにぎりが大好きなものでして(笑)
お茶碗に盛られた白米も勿論好きなのですが
不思議とおにぎりの方が食欲が湧くんですよね。
昔から、サッカーに出かけるたびに母が握ってくれたおにぎりが大好きだったでしたが、
そこには母の愛情も詰まっていたのかなぁ、とふと思い出しました。
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
【人生の再スタートは、いつだって踏み出せる】
そう教えてくれる、心温まる作品です。
米作りと田舎での生活を通じて、少しずつ前を向いて歩き出す
彼らの姿に心震えるその瞬間を、ぜひお楽しみください。