こんにちは、みくろです。
今回は、伊坂幸太郎先生の連作短編小説「アイネクライネナハトムジーク」をご紹介いたします。
- “「人生良いことばかりじゃないなぁ…」とほんの少し落ち込んでいる人”
- “「人は、人と人との繋がりの中で生きている」という不思議な温かさを感じたい人”
- “伊坂幸太郎先生、唯一の恋愛小説を読んでみたい人”
はじめに
“小さな夜の曲”
「アイネクライネナハトムジーク」はドイツ語。
日本語に訳すと「小さな夜の曲」となるそうです。
この時、ふと思ったことを少しだけ。
本作は連作短編集となっており、一つの大きな時間軸の現在と過去を描いています。
仮に各短編がまとまった時間をそれぞれ有しているとした場合、それぞれの夜があるということになります。
そう考えると、
短編の有するそれぞれの夜
▶︎短編(=小さい)+ 夜 + 連作(=集まり)
▶︎小さな夜の集まり
となり、短編が集まることで「アイネクライネナハトムジーク」という1曲の音楽を完成させているのかなぁ、、、なんて。
余談を失礼いたしました。
さぁ、感想を綴って参りましょう。
ーーー
Audibleなら無料体験で聴けます☟☟☟
\いつでも解約できます/
書籍・電子書籍はこちら☟☟☟
あらすじ
妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL……。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。
幻冬舎より
心に響いた言葉
「いいか、後になって、『あの時、あそこにいたのが彼女で本当に良かった』って幸運に感謝できるようなのが、一番幸せなんだよ」
幻冬舎「アイネクライネナハトムジーク」より
「いいか、外交問題の解決に必要なのは、どうして?じゃなくて、どうやって、なんだ」
幻冬舎「アイネクライネナハトムジーク」より
「いいか、藤間、外交そのものだぞ。宗教も歴史も違う、別の国だ、女房なんて。それが一つ屋根の下でやっていくんだから、外交の交渉技術が必要なんだよ。一つ、毅然とした態度、二つ、相手の顔を立てつつ、三つ、確約はしない、四つ、国土は守る。そういうものだ。離婚だって、立派な選択だ。ともにやっていくことのできない他国とは、距離を置くほうがお互いの国民のためだからな」
幻冬舎「アイネクライネナハトムジーク」より
「あのね、歯車を舐めんなよ、って話だからね。どの仕事だって基本的には、歯車なんだから。で、歯車みたいな仕事をしていても、人生は幸せだったりもするし」
幻冬舎「アイネクライネナハトムジーク」より
「姉が昔から洗脳してきたからね。苦しい子供時代を過ごしてきたからこそ、礼儀正しくしろ、って」
幻冬舎「アイネクライネナハトムジーク」より
以前、織田美緒が、「親になるのに資格試験がない、というのが恐ろしい」と嘆いたのを思い出した。「まあ、そんなことになったら親になれる人が全然いなくて、人類滅びちゃうけどね」
幻冬舎「アイネクライネナハトムジーク」より
感想
過去=現在
「過去は変えられないが、未来は変えることができる」
なんて言葉があります。
これは半分正解で、半分不正解なのかもしれません。
本書にこんなセリフがあります。
「もっと簡単に言えばよ、自分がどの子を好きになるかなんて、分かんねえだろ。だから、『自分が好きになったのが、この女の子で良かった。俺、ナイス判断だったな』って後で思えるような出会いが最高だ、ってことだ」
幻冬舎「アイネクライネナハトムジーク」より
僕なりの言葉で言い換えますと、
「過去の”事実“は変えられないが、過去の”捉え方“は変えることができる」
ということになります。
人生において、転んで傷ついてしまうことは必ずあります。
それを
「あの時転んだせいで今も傷が痛む」
と思うだけなのか
「あの時転んで傷は痛むけれど、おかげでここは危ないことがわかった」
とポジティブに思えるのか。
いつだって過去の捉え方を変えられるのは、今この瞬間でしかありません。
最高の過去を作るには、「あの経験があったから」と思えるくらいに最高の今を生きるしかないのです。
結果として、それは最高の未来にも繋がりますからね。
正しさの在り方
何が正しくて、何が正しくないのか。
その基準は法律かもしれないし、概念かもしれません。
正直なところ、何もわかりません。
ただ一つわかることは、正しさは普遍的なものではないということ。
「お母さんに言われます。自分が正しい、と思いはじめてきたら、自分を心配しろ、って」
幻冬舎「アイネクライネナハトムジーク」より
「あと、相手の間違いを正す時こそ言葉を選べ、って。」
立場や状況によって、正しさは変わります。
だからこそ、自分の正しさを相手に押し付けないこと。
相手の正しさを全て理解しろとは言いませんが、可能な限り受け入れた上で、自分の思いを伝えることが大切なのかもしれません。
本当のかっこよさ
「あの人めちゃくちゃかっこいいな…」
って、街でつい目を奪われてしまう人いませんか?
これは、外的要因(容姿・服装・姿勢等)によるものがほとんどかと思います。
しかし、「外的要因を完全に度外視してもめちゃくちゃかっこいい」という人もしっかり存在しますよね。
「どうせ親がいなかったから乱暴なんだ、とか思われたら、ほかの頑張ってる子供たちに申し訳ないでしょ。行儀良くて、常識があって、でも強い、というのが恰好いいじゃないの」
幻冬舎「アイネクライネナハトムジーク」より
彼らがかっこいい本当の理由は、”心”。
外見に囚われず、環境や境遇のせいにもせず、ただ自分がこうありたいと願う自分を体現する。
内から溢れ出すこの魅力は、接して初めて気付くことができるんですよね。
「大切なことは目に見えないんだよ」
って星の王子さまも言っていましたから。
まとめ
いかがでしたか?
人生いろいろあります。
良いことも、良くないことも、たーくさんあります。
ただ、少し考えてみてください。
「自分がバナナの皮を踏んで滑ったおかげで、後ろを歩く小さな子供が滑らずに済んだかもしれない」
「誰かが残り1個のセール品を買ってくれたおかげで、販売担当者はとても褒められたかもしれない」
「なんでもない小さなことが、誰かの小さな幸せに繋がっているかもしれない」
そう考えたら、自分の小さな不幸もたまには悪くない。
人は人と繋がって生きているということを、明日は何が起こるだろうというわくわくを、本書のなんでもない日常が教えてくれます。
ご一読いただきありがとうございました^^
ーーー
書籍・電子書籍はこちら☟☟☟